発掘情報館
ピロティ(屋外体験)

火を起こしてみたい
-江戸時代の高級ブランド吉井火打ち金- 大西研究員

人間とほかの動物のちがいのひとつは「火を使う」ことだといいます。
真っ暗な夜に燃えるたき火は、獣たちから身を守ってくれたでしょう。
火のあたたかさとあかりで、心が安らいだことでしょう。
また食べ物を焼いたり煮たりできるようになり、生活が豊かになったことでしょう。
情報館のピロティでは、火起こしの体験もできます。

木の棒を、くぼみのある木の板の上で回転させる火起こしは、縄文時代から知られていたようです。
藤岡市の上戸塚正上寺(かみとづかしょうじょうじ)遺跡では、この火起こし道具が見つかっています。
今から1600年近く前のものです。
体験学習でも、この方法は人気があります。
火がどんなに大切なものであったか、身体で感じ取ることができます。
もう一つ、鉄と石を打ち合わせた時に出る火花を使った火起こしも体験学習の花形です。
鉄を含んだ鉱石と、堅い石とを打ち合わせたのが最も古い火起こしの方法ではないかとも言われています。
テレビの時代劇などでは火打ち金をつかった「切り火」が時々見られますが、
江戸時代に使われた火打ち金で、「最高」といわれたのが高崎市吉井町で作られた火打ち金だったのをご存知ですか?
大西研究員に、火起こしと吉井火打ち金の話を聞いてみました。

火きり臼
火打金
【大切な火】

最近では「火」をあまり目にしなくなってきました。でも、今の便利な生活は火によって支えられているのです。電気も、もとをたどれば多くは火を使っておこしています。また、おいしい料理も火がなければ調理(ちょうり)できませんし、暖房(だんぼう)もなくなってしまいます。

「火のない生活」考えられますか?

では、ライターどころかマッチもない明治時代より前は、どうやって火を付けていたのでしょうか。人間が簡単に火を付けられるようになるには、おどろくほど長い時間がかかったのです。

【火をおこす二つの方法】

火が燃えるためには「燃料(ねんりょう、燃えるもの)」と「空気(酸素)」、「温度(着火温度)」が必ず必要です。身のまわりには、燃えるものと空気はありますから、火起こしの歴史は「どのような方法で着火温度を得るか」の歴史といえます。

ものが着火するほど高い温度(着火温度)を得るには、いくつかの方法がありますが、もの同士をこすり合わせて熱を出す「摩擦(まさつ)」が代表的な方法です。歴史的に見た日本の発火法(はっかほう)も「摩擦」を利用していました。群馬県内の発掘調査でも、この時に使用した道具が見つかっています。

現在確認されている方法は、回転摩擦式と火打式の二つです。(海外では他の方法もありますが、ここでは説明しません。)