事業団の発掘と整理
調査研究員のイチ推し

08 縄文土器に表現された縄文人の顔

縄文時代晩期  唐堀(からほり)遺跡(吾妻郡東吾妻町)

鈴木佑太郎
 私のイチ推しは、上信自動車道建設に伴って調査された唐堀遺跡から出土した顔付(かおつき)土器です。唐堀遺跡では、木の実の加工をした水場遺構や配石遺構などが発見され、縄文時代後期から晩期の多量の土器をはじめとして、彫刻のある木柱、耳飾り、石鏃など多様な遺物が出土しました。
 顔付土器は、縄文時代晩期(2300年前ごろ)の壺形(つぼかた)土器で、胴部に粘土紐で顔の輪郭と眉、鼻、唇を描き、沈線などで眼(まなこ)と口を表現し、さらに口の上側左右には、イレズミも表現されています。
 近年の研究では、顔付土器の顔は土偶の顔と親縁関係(しんえんかんけい)にあるとされており、この顔の眉と鼻の造形は、同じ時期に大宮台地(おおみやだいち)を中心に分布する中空木菟土偶(ちゅうくうみみずくどぐう)の表現とよく似ています。縄文人はどんな祈りを込めて、縄文土器に顔を表現したのでしょうか。

【群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館 収蔵展示室】