群馬の遺跡・出土品整理遺跡の最新情報
今月のトピック遺跡紹介平成23年12月
向矢部(むかいやべ)遺跡【北関東自動車道関連】
奈良時代の柄付銅製杓(えつきどうせいしゃく)
向矢部遺跡は太田市只上町に所在する遺跡で、北関東自動車道建設に伴って平成16年度に発掘調査が行われ、奈良・平安時代の竪穴住居を主とした集落が見つかっています。
その中の23号竪穴住居から、奈良時代の土師器や須恵器と共に銅製容器(写真1)が出土しました。竪穴住居は縦長の方形で、長辺5.12m、短辺3.84m、床までの深さは30cmの規模をなし、出土土器から8世紀第3四半期の住居と考えられます。住居内のカマドはとても残りが良く、甕が掛かったままの状態で、焚き口天井部には3個体の甕を横位に連結させた状態で潰れて出土しています。さらに、遺物はカマド周辺に多く集中し(写真2)、カマド前の床面上からは土師器の杯、須恵器の杯蓋・椀、土師器の甕が、カマド右袖際の床面から僅かに傾いた状態で銅製容器、そして甕、貯蔵穴と土坑の間の床面から大型の甕、土坑際の床面付近からは小型台付き甕が出土し、北東隅付近の床面からは鉄製の斧も出土しています。また、この住居の床面の一部が赤く焼けていたことや、床面を覆う埋土中に炭化材が多く認められたことから、焼失住居と考えられます。
出土した銅製容器は、口端部の一部を欠くもののほぼ完形(一部に歪みをもつ)です。外径22cm、内径20cm、高さ7.5cm程で、口縁部は外側に1cmほど屈曲し、底部は丸底となっています。器厚は1mm程で極めて薄く、重量は272.7gです。側面には、6個の鋲留め箇所(写真3)と上部を頂点とした三角形状の3つの孔(写真4)や、さらに細い銅鋲留め(写真5)が確認できます。また、内面には、径1.5cm程の凹凸状の痕跡が横方向に浅く連なっている状況が数段みられ、X線写真でも側面と底面の厚みにばらつきのあることがわかっています。
口縁部の一部に見られる地金は、鮮やかな銅色(写真6)を見せていますが、成分分析の結果、銅が97%のほぼ純銅製であり、錫や鉛が含まれないことから青銅製ではないことが判明しました。また、容器の表面には連続した凹凸が残っていますが、銅の純度の高さを生かして叩き出しによる製法で薄く仕立てられたことがわかります。さらに、鋲留め部には鉄鋲と銅鋲の2種類が見られることから、本来はこの部分に金属製の柄が付いていたと考えられます。
これらの点を踏まえると、この銅製容器は約40㎝前後の鉄製の長い柄が付く「鉄柄付銅製杓(てつえつきどうせいしゃく)」の可能性が高く、その場合には全国で7例目の発見となります。
向矢部遺跡は、古代「山田郡」の中心地の一角にあたっており、こうした希少な「鉄柄付銅製杓」が出土する背景を知る上でとても重要な地域だと言えるでしょう。

写真1 出土した銅製容器「柄付銅製杓」

写真2 23号住居のカマドと遺物出土状況

写真3 側面の鋲留め部(本来は鉄柄が付く)

写真4 側面に付いた孔(こし口?)

写真5 側面に残る細い銅鋲

写真6 鮮やかな銅色を見せる地金
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