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後賀中割(ごかなかわり)遺跡【下高尾小幡線庭谷工区関連】

令和3年3月
渦巻文杏葉(うずまきもんぎょうよう)

 ぐるぐると渦をまく独特の造形美。富岡市後賀に所在する後賀中割遺跡(T007遺跡)の発掘調査中、8号古墳の横穴式石室からこの遺物を発見した担当者は、思わず首をかしげました。まったく見たことのない奇妙な金属製品だったのです。
 それもそのはずです。調査を終えて整理作業が進んでいく中で、この遺物は「渦巻文杏葉」と呼ばれる馬の飾りで、全国でも十数例しか知られていない、非常に稀少な馬具であることが分かりました。近畿、九州、山陰の6世紀末~7世紀前半の古墳から、それぞれ1~2点程度が出土する事例がほとんどで、謎の多い杏葉です。後賀中割遺跡(T007遺跡)8号古墳からは5点が出土していますが、これは東日本では2例目の発見です。ちなみに、1例目は東京国立博物館に所蔵されている藤岡市神田出土とされる資料ですので、発掘調査で出土したものとしては東日本初となります。
 後賀中割遺跡出土資料を観察していくと、鉄棒をねじってから渦巻状に巻き付けていくという、非常に凝った構造をしていることが分かります。鋲や責金具には鈍い光沢があり、銀や錫といった金属を利用している可能性があります。
 8号古墳の主はどのような人物だったのか。他地域の事例とはどのような関係性があるのか。今後の研究によって解き明かしていければと思います。
写真1 渦巻文杏葉
図1 渦巻文杏葉復元図
図2 杏葉着装図