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石川原(いしかわら)遺跡【八ッ場ダム建設事業】

令和2年1月
茶袋の入った茶釜(ちゃがま)・茶筅(ちゃせん)

長野原町の石川原遺跡では、天明三年(1783)の浅間山の噴火に伴う天明泥流で倒壊した51号建物のいろりの中から、茶釜(ちゃがま)が出土しました。直径約21cmの江戸時代の茶釜です。付近から火箸(ひばし)なども見つかりました。
茶釜の蓋(ふた)は、錆(さび)で癒着していて取り外すことができず、わずかに蓋の割れた所から内部が観察できました。中には、巾着状に縛られた袋が入っていました。この袋には、お茶の葉が入っていることが想定できます。このような使用状況が見つかったことで、天明の頃には、お茶を茶釜で煮出して入れていたことがわかりました。
また、大ぶりの茶筅(ちゃせん)も確認されています。長さ15cm程度の竹製で、今のものと比べるとかなり大きく無骨な印象を受けます。これで煮出したお茶を泡立てて飲んでいたと考えられます。
この茶葉を煮出して茶筅で泡立てて飲む方法は、安土桃山時代の頃から始まったとされています。その後、お茶の質が向上した江戸時代の中頃から少しずつ廃れていきました。このようなお茶の飲み方は、今でも新潟県糸魚川市や富山県朝日町などの一部地域に残っており、「バタバタ茶」と呼ばれています。
今回の発見は、江戸時代の庶民のお茶事情をうかがい知る貴重なものとなりました。
茶釜
茶釜を上から見た様子
茶釜の中の様子
茶筅