| 小学校5年生 算数 「円と正多角形」 | |||
| 1、体験の目的 | |||
| 「円と正多角形」の単元で学ぶ知識や技術が実生活の中に生かされていることを意識するために、まず縄文時代の竪穴住居の設計を行います。この体験活動を通して、身の周りの構造物にも同様の知識と技術が利用されている事に気付き、本単元の学習内容に興味・関心を持ち積極的に学習に取り組んでいこうとする意欲付けにもなるでしょう。 | |||
| 2、竪穴住居の設計を生かした体験的な学習活動 | |||
授業者は、学習の内容が常に子どもたちの身近なものであるように考えて授業を行なっています。算数の授業において、計算などの基礎・基本については、日頃、活用の機会が多く、子どもたちもそれを身近に感じることができると思います。しかし、図形などの授業についてはどうでしょうか?数学の専門家には「そんなことはない」と言われてしまうでしょうが、私は「如何にして子どもたちに身近な問題としてとらえてもらえるか」ということにとても苦労した経験をもっています。今回は、発掘調査で見つかった縄文時代の竪穴住居の設計に、小学校5年生の円と正多角形の中に出てくる机上の操作が、実際の作業として取り入れられているということを紹介したいと思います。
赤城村にある三原田遺跡では色々な形に設計された住居が発見されています。下の図の二つの住居の平面図を重ねてすかしてみると、円の大きさも、柱穴の位置もほとんど一致しています。柱穴を線で結んでみると、美しい正六角形が浮かび上がってきます。縄文人は地面に同じ構図を再現することができたようです。 |
|||
左の2つの図は、三原田遺跡で発掘された住居の平面図です。上の写真は、2つの図の左側の竪穴住居跡の写真です。柱穴の中心を線で結ぶと、美しい六角形を示します。柱穴の周りに描かれている住居の内側に掘られた溝(周溝)も、美しい円を示しています。円を描くのに必要な道具は何か?子どもたちはコンパスをすぐに思い浮かべるでしょう。でも、当時の道具は何だろうか?こうした疑問を考えていく中で、動かない1点の中心から等距離に点を集合させて円を描くコンパスの原理に辿り着き、それをもとに当時の道具である、2本の棒とそれを結ぶ1本の縄を考え出すことができるでしょう。 さらに竪穴住居を調べていくと、下に挙げるように、柱穴には円を4等分、5等分、6等分など様々な形で配置されているものがあるということが分かります。これらの柱穴を結んでみると、それぞれ、正方形、正5角形、正6角形の幾何学模様が浮かび上がってきます。様々な形を、今日私たちが学んでいるものと同じ原理で、描き出している縄文人たち、子ども達に縄文人の家に描かれるこれらの幾何学模様の話をしたらきっと目を輝かせることでしょう。 教室での図形の授業が終わったあとに、二本の棒と1本の縄で縄文人にチャレンジ。授業の中で観察し、描いた図形と同じ方法で描かれた縄文人の竪穴住居の設計図。机の上でできたことを、校庭に再現することができるでしょうか?この体験の中で、興味や関心が高まり、図形の構成について、より一層理解が深まることでしょう。 |
![]() |
![]() |
![]() |
|
| 【4等分の位置に柱穴】 | 【5等分の位置に柱穴】 | 【6等分の位置に柱穴】 |
| このような、体験的な活動を授業のまとめとして取り入れる事は有効なのではないでしょうか。このような体験的な活動により、子どもたちは自分たちの学んでいることが生活の中に使われていることを知り、学習の必要性に気付くことができるでしょう。また、学習内容が現在の生活の中にも生かされていることについて、視野を広げることができるのではないでしょうか。竪穴住居の設計図を作るこの体験的な活動。ぜひ一度、お試しあれ。 | |
| 3、必要な道具 | |
| 棒2本、縄1本(1組分。児童の力に耐えられる強度ものを準備) | |
| 4、授業実践にあたってのヒント | |
| 縄文時代の竪穴住居ということで、考古学的な知識が多少必要となってきます。ここでは、授業のヒントとして、活動の中にでてくる可能性のある考古学用語を列挙します。 | |
| ○ 縄文時代 | |
| 今から12,000年程前から始まり、およそ1万年間続いた時代。古い方から順に草創期・早期・前期・中期・後期・晩期の6つの区分に分けられている。 | |
| ○ 竪穴住居 | |
| 主として縄文時代から平安時代に見られる住居の一形式。当時の地表面を掘りくぼめて土間を作り、その上に上屋をかけて作られている。床面の形状は円形、楕円形、方形、長方形、隅丸方形など様々である。 | |
| ○ 炉 | |
| 住居跡の内部やその他に見られる火を燃やし調理や暖房に役立たせる施設の跡。 | |
| ○ 柱穴 | |
| 柱を立てるために掘った穴。 | |
| ○ 壁周溝(周溝) | |
| 竪穴住居などの壁際に、住居内を巡るように掘られた溝。壁材があった痕跡を示すものと考えられている。 | |
| ○ 平面図 | |
| 遺構を記録するために描いた図。遺構を真上から見た図が描かれる。 | |
| ○ 遺跡 | |
| 遺物や遺構が存在する空間及びその集合体。 | |
| ○ 遺構 | |
| 過去の人間の行動に関連して残された痕跡の総称。住居、墓、穴などの意識的に作られたものと、作業空間や廃棄所などの無意識的に作られたものとに分けられる。足跡なども遺構に含まれる。 | |
| ○ 遺物 | |
| 過去の人間行動に関連して残された物的な痕跡。加工された結果を残す土器、石器など(人工遺物)と加工された結果を残さない動植物の遺体など(自然遺物)に分けられる。 | |
| 5、引用・参考資料 | |
| 〈文献〉 ・「三原田遺跡」 1980年 群馬県企業局 ・「群馬県史」通史編1 原始古代 1990年 群馬県 ・「群馬県遺跡大事典」 1999年 財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団 ・「考古学雑誌」第67巻 第4号 1982年 日本考古学会 ・「日本考古学用語事典」1998年 斉藤 忠 学生社 〈掲載写真〉 ・北橘村歴史資料館復元住居(現在も見学可能) ・三原田遺跡住居(見学不可能、資料は(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団にて保管) |
|
| (主任調査研究員 松原孝志) |
|
|