(まつもと23号こふん)
邑楽郡邑楽町 ・ 古墳時代
 直径20mにみたない小さな古墳から銀象嵌(ぎんぞうがん)の文様で飾られた刀が発見されました。
 邑楽町の北西部、石打地区の台地上には、東西1q、南北300mの範囲に40基ほどの古墳がまとまってつくられ、松本古墳群と呼ばれています。古墳群の中には5世紀紀後半につくられた可能性のある八王子神社古墳のような大型古墳もありますが多くは小さな円墳の集まりです。
 松本23号古墳も直径12mの小さな円墳です。1989(平成元)年に邑楽町教育委員会により発掘調査が行われました。人を埋めた主体部は横穴式石室でした。石室からは鉄の刀2本、金銅(こんどう)製の耳飾り、鉄の矢尻(やじり)などが発見されました。古墳の表面からは少量でしたが円筒埴輪の破片も採集されています。この古墳は6世紀の終わりから7世紀の初めにかけてつくられたものと考えられます。
 銀象嵌の文様がある刀は邑楽町の指定文化財になりました。現在は、他の松本23号古墳の出土品とともに町の教育委員会に保管されています。

■ 見学案内
 東武小泉線篠塚駅の北方1.5q、徒歩20ほどの位置にあたります。車では太田市内から国道122号を東方に進み約10分、石打交差点の東方向1qのあたりです。
 松本23号古墳は発掘調査後消滅してしまい現在は見学することはできませんが、松本古墳群の9・10・11・12・13号古墳は1988(昭和63)年の町の指定を受けました。平地林の中に古墳のこんもりとした高まりがそこかしこに残されています。

■ ここがポイント
 2本発見された大刀のうちの一つは鍔(つば)やはばき、鞘尻金具(さやじりかなぐ)といった刀の部品に銀象嵌が施されていました。鍔は長さ7.5p、厚さ0.4pで、台形の窓が8カ所開いています。表裏両面と側面に渦巻き文様や二重の半円文が銀象嵌によりえがかれています。

■ もっと知りたい!
 群馬県内の古墳からみつかった刀には銀象嵌がほどこされたものが50例ほどあります。邑楽町の周辺では板倉町筑波山(つくばやま)古墳からみつかった円頭大刀(えんとうたち)と呼ばれる大刀に鳳凰(ほうおう)という鳥の文様を表現したものがあります。象嵌を施した刀は大和王権が独占的に作り、これを王権を担う豪族や地方の有力者に分け与えたとする考える研究者もいます。
 邑楽町教育委員会発行の『松本23号古墳発掘調査報告書』には発掘調査の記録がかかれています。村岡やす子・関邦一・徳江秀夫「邑楽町松本23号古墳出土の象嵌大刀」『研究紀要』15群馬県埋蔵文化財調査事業団にはこの大刀に施された象嵌文様の図が乗っています。群馬県内出土の象嵌大刀の一覧表も付いています。
〈徳江 秀夫〉